岡田工業 技術者のための教養講座 〜その1〜 「単位の話」






   とある建設設備会社での会話


社員A「社長、今度の資格試験の計算問題でわからないところがあるんですけど、教えてもらっていいですか?」 社長「おや、今回はやる気だねぇ!さすがに3回目ともなると落ちるわけにはいかんと目覚めたのかな?」 社員A「この問題なんですけど、なんか数字がごちゃごちゃして見づらいんですよ。 s=π×r×rみたいに簡単にならないんですか?」 社長「ずいぶん横着なことを言うねぇ、ある特定の数式にはそれぞれ意味があるんだから定数×変数みたいな 単純化は出来ないんだよ。そもそもそれぞれの計算で中に現れる数字がどんな意味を持つかイメージ しながら解いていけばそんなにむずかしくはないはずだよ。」 社員A「はあ、イメージですか?でもねえただの数字だし・・」 社長「さっきあなたが言ってたs=π×r×rという式にも意味やイメージがあるじゃない。わかるか?」 社員A「そんなの当たり前じゃないですか?これは円の面積を求める公式で半径の2乗に円周率をかけているわけでしょ。」 社長「そうあなたはこの式から丸い円をイメージし半径と面積との関係を表す式だと知っていた。 これを明確に示すために単位を付けて見よう。円の面積s[u]=円周率π×r[m]×r[m]となる。 円周率に関する話はそれだけで本が何冊も出来るぐらいいろいろあるのでここでは述べないことにして 半径の単位と面積の単位はどうなってる?」 社員A「あ、そうか元は長さを表すmが面積を表すuになったわけですね。長さという1次元の単位が面積という 2次元の単位になったわけだ。」 社長「うん。まだ満点とはいかないが単位を通してイメージする、その数値の表現しようとするものが何物かを考えることが 理解に不可欠ということはちょっとわかったようだね。まああとは時間をかけてその式を見直してそれでもわから なければもう一度来なさい。 そうそう私が以前に書いた『現場で見つけた面白研究テーマ』の文集の中に単位を扱ったものがある。これも参考にしなさい。」 社員A「ありがとうございます。式を覚えるんじゃなくて意味を考えるってことですね。やってみます。」
     こうして社員Aは意気揚々と去っていったがまだまだ資格試験合格への前途は平坦な道ではなさそう。       しかし社長のアドバイスを得て本人はその気になったようだ。       みんなも下にある社長の文章を読んで「単位」のことちょっと思い出して見ませんか?



1、     よく出てくる割に理解しずらい「単位」の復習

 

1、1 熱量とその周辺

(イ)「仕事[J]: 1ジュール[J]の仕事とは、重さ(=力)1ニュートン[N]の物体を1[m]

だけ動かしたときの仕事

 

                                 (1)

 

「力」[N]: 1ニュートン[N]の力(=重さ)とは、質量1[kg]の物体に1[m/sec2]の

加速度が作用したときの力(=重量)

 [例]: 筆者のからだは質量60[kg]である。従って、体重は60[kgf]である。これは地球の重力の加速度は9.8[m/sec2]であるから、地球上では9.8[kg]×60[m/sec2]=588[kg m/sec2]=588[N](約600[N])の体重であることを表す。宇宙空間では、質量は60[kg]のままであるが、重力の加速度は0[m/sec2]であるから、体重は0[kg m/sec2]=0[N]になり、からだは空中に浮かぶ。

 

(ロ)「仕事率[W]: 1ワット[W]の仕事率とは、単位時間1[sec]の間にできる仕事[J]

1 [W]=1 [J/sec]                                            (2)

 

(ハ)熱の仕事当量----ジュール(Jamws Prescott Joules 1818〜1889)は、水、鯨油、水銀など比熱の異なる物質について実験し、物質に関係のない普遍的な定数として、熱の仕事当量を決めた(1843)。[1]

 

1 [kcal]=4.18605[kJ]                                       (3)

 

カロリー[cal]:純水1gを標準大気圧[101.325kPa]{760mmHg}の圧力下で、14.5℃から
15.5℃まで温度を1 degC上げるのに必要な熱量---15℃カロリー

 

式(3)より、  1[kW h]=3600[kJ]=(3600/4.18605) [kcal]=860[kcal]          (4)

 

(ニ)比熱   水(15℃)  c=[4.18605 kJ/kg・K]

乾き空気   cp=[1.006 kJ/kg・K]

 

図1.1 ジュールの実験装置(右)

この装置は、ロンドン科学博物館に展示

されている。[2]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


1.2 熱伝導率、熱通過率説明図[3]

 

(ホ)熱伝導率 [J/m degK sec],[W/m degK]・・・・・材料の熱の通り易さ

 [J/m degC sec],[W/m degC]

                             (5)

          

 

熱伝達率 α[J/m2 degK sec],[W/m2 degK] ・・・壁表面の熱の伝わり易さ

対流熱伝達率αc

                         (6)

       

 

 

1.3 熱伝達率説明図[4]

 

ふく射熱伝達率αr

ふく射熱の授受は本来シュテファン・ボルツマンの法則によって表されるが、温度差が小さい時は式(6)の形で近似できる。

総合熱伝達率 αcrとおけば、

                    (7)

 

熱貫流率 K[J/m2 degK sec],[W/m2 degK]

                       (8)

温度伝播率、または、温度拡散率  a,κ[m2/h],[ m2/sec]

                                                            (9)

              

面積A[m2]

垂直力 F [N]

1、2 圧力

 

(イ)圧力    [N/m2]               (10)

            「力、重量」[N = kg m/sec2]

            「面積」[m2]

 

(ロ)力のモーメント M                              図1.4 力と圧力の関係

曲げモーメント M    [N m]

トルク     T

 

(ハ)他の単位系からの換算

例‐1 17.5 [kgf/cm2]=17.5[kg]×9.8[m/sec2] ×104[1/m2]

=1.715×106 [N/m2 =Pa] =1.715 [メガパスカル M Pa]

 

例‐2 出頭20 m=20 m水柱 =20 mAq=20 mH2O     20m=2000cmであるから、

底辺が1cm角(1 cm2)で、高さが2000cm の水の柱の体積=2000 cm3であるから、水の

比重量 γ=1 [gf]とすると、この水柱の重量=2000 gf=2 kgf

水柱の底にかかる圧力=2 [kgf/cm2]

=2 [kg] ×9.8[m/sec2] ×104[1/m2]=1.96

=1.96×105 [N/m2 =Pa]

=1.96 [M Pa]

例‐3 標準大気圧P0= 101.3[kPa]と昔習った水銀柱760 [mm]とはどのような関係にあるか?

P0=0.76 [mHg] ×13.59510[Aq/Hg]=10.3323[mAq]=10332.3[mmAq]=10332.3[kgf/m2]

=10332.3[kg/m2] ×9.80665[m/sec2]=101325[Pa]=1013.25[ヘクトパスカルh Pa]

=101.325[キロパスカル kPa]=1.01325[bar]=1013.25[mmbar]         

=1 [atm、または、 ata]

 

1、3 送風機・ポンプ・電動機器の動力

 

(イ)空気動力(送風機のとき)

 


SI単位系               重力単位系

 

 

 

 


としたとき、             としたとき、

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 



[1] 小暮陽三:絵でわかる熱力学、オーム社(1995) p.14

[2]  1)と同じ。

[3] 空気調和・衛生工学会編:空H調和設備の実務の知識、オーム社(1995)p.133

[4] 同上p.132






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